2015年9月30日水曜日
まだ10月にもなっていないのにフィンランドのお店はクリスマス準備
まだ9月末だというのに、フィンランドのSグループ系列のスーパーPrismaでは、季節限定クリスマスビールやサイダー(こちらのサイダーはすべてアルコール飲料)、写真上のクリスマス時期に飲むGlögi(グリューワイン)などを売り始めています。
こちらは「クリスマス・アップル」サイダー
おもちゃのコーナーでも、レゴの『スター・ウォーズ』アドベントカレンダーが売られていました。昨年もこのPrismaでは10月初めにはクリスマス用の装飾品を売り出していました。
先週ごろからようやく秋らしくなってきたと思ったばかりなのですが、もうクリスマスが待ちきれないのかな…
(abcxyz)
2015年9月28日月曜日
十二単に書道に折り紙!ヘルシンキの日本文化イベントレポート
去る9月26日、在フィンランド日本大使館とMalmitalo、Turku私立図書館によるイベント*「Japanilaista teetaidetta ja kimonoja」(日本語タイトルは「桜と平成の源氏物語絵巻展:書と茶」)を訪れてきました。
このイベントは、ヘルシンキ市のマルミ(Malmi)にある文化センター「Malmitalo」で行われただれでも自由に参加できる無料のイベント。このMalmitaloでは、今年に入ってから数回「Popcult Day」というポップカルチャーイベントが開かれたりもしており、当ブログでもご紹介したことがあります。このほかにもMalmitaloでは昨年、10代前半の若者を対象にした日本文化紹介コースも開かれており、日本関連のイベントとも無縁ではありません。
さて、せっかくなので着物を着てイベント会場についてみると…あれ、閑散としている?
そんなことはありませんでした。中の劇場では、日本伝統文化研究所の堀江恭子先生(紫の着物の方)による十二単のショーと、お茶体験が行われていて、来場者がみんなそちらに行っていたよう。劇場はほぼ満席でしたよ。
茶道のほうはちゃんと見なかったものの、フィンランド人ぽい着物を着た男性と、日本人のお茶の先生がお茶を点てていたよう。
(ちなみにスオメンリンナ島/Suomenlinnaには裏千家の茶室が建っています。フィンランドと裏千家の歴史はけっこう長いんだそうですよ。)
お茶体験には長蛇の列が。
来場者は老若男女幅広い層の人が来ており、中には猫耳に猫っぽい手足(?)、尻尾も付けた女の子、ゴスロリの服装の子、そして、本格的な着物を着たフィンランド人の姿も。私に話しかけてきた中年男性の方は「昔はシマノと、今では三菱と働いてる」なんていう方も。
劇場で十二単のショーが終わると、Malmitaloの通路部分では書道で好きな文字を書いてもらうことのできるコーナーや、つまみ細工の販売が始まりました。
書道では「愛」、「平和」などの文字のほか、「私をイメージして何か書いて」、とかいう要望があったりもしていましたが、柔軟に対応されていました。さすが。
Malmitaloの中には図書館もあり、図書館の内部では折り紙のワークショップが行われていました。参加者は小さな子供から高齢の方まで、日本人の図書館職員の方の指導のもと、折り紙本を読みながら様々な折り紙を作っていました。
図書館では日本関連の本の特集もなされていました。着物から食べ物、歴史まで、幅広いジャンルの本が並べられ、日本文化を紹介していました。
もちろん漫画も。なぜか団扇や皿も図書館内に展示されていました。
Malmitaloの廊下部分には外務省が出している日本紹介マガジン「にぽにか」が。「にぽにか」にはウェブ版もあります。
2階部分は書や源氏物語の絵巻物が展示されていました。
在フィンランド日本大使ご夫妻も来場されていたこのイベント。来場者は、皆興味深そうにそれぞれの催しものを楽しんでいました。この次の日には同イベントはフィンランドの古都、Turkuで行われるそうです。
先日大いに批判したジャパンウィークとは違い、ここで通訳として活躍されていたヘルシンキ大学の日本語専攻の学生さんによればちゃんと正当な対価が支払われているとのこと。よかったよかった。
*なお、イベントのプロデュースは元シリア大使の国枝 昌樹さんが会長、今回来フィンされていた堀江恭子さんが副会長を務める「 The Executive Committee of Traditional Arts of Japan, Towards the 21st Century」(たぶん日本名は「日本の伝統芸術21世紀展実行委員会」もしくは「日本の伝統芸術21世紀展望展実行委員会」。いろいろな国で同様のイベントをやっていることくらいしかネットには載ってないけど)。
(abcxyz)
このイベントは、ヘルシンキ市のマルミ(Malmi)にある文化センター「Malmitalo」で行われただれでも自由に参加できる無料のイベント。このMalmitaloでは、今年に入ってから数回「Popcult Day」というポップカルチャーイベントが開かれたりもしており、当ブログでもご紹介したことがあります。このほかにもMalmitaloでは昨年、10代前半の若者を対象にした日本文化紹介コースも開かれており、日本関連のイベントとも無縁ではありません。
さて、せっかくなので着物を着てイベント会場についてみると…あれ、閑散としている?
そんなことはありませんでした。中の劇場では、日本伝統文化研究所の堀江恭子先生(紫の着物の方)による十二単のショーと、お茶体験が行われていて、来場者がみんなそちらに行っていたよう。劇場はほぼ満席でしたよ。
茶道のほうはちゃんと見なかったものの、フィンランド人ぽい着物を着た男性と、日本人のお茶の先生がお茶を点てていたよう。
(ちなみにスオメンリンナ島/Suomenlinnaには裏千家の茶室が建っています。フィンランドと裏千家の歴史はけっこう長いんだそうですよ。)
お茶体験には長蛇の列が。
来場者は老若男女幅広い層の人が来ており、中には猫耳に猫っぽい手足(?)、尻尾も付けた女の子、ゴスロリの服装の子、そして、本格的な着物を着たフィンランド人の姿も。私に話しかけてきた中年男性の方は「昔はシマノと、今では三菱と働いてる」なんていう方も。
劇場で十二単のショーが終わると、Malmitaloの通路部分では書道で好きな文字を書いてもらうことのできるコーナーや、つまみ細工の販売が始まりました。
書道では「愛」、「平和」などの文字のほか、「私をイメージして何か書いて」、とかいう要望があったりもしていましたが、柔軟に対応されていました。さすが。
Malmitaloの中には図書館もあり、図書館の内部では折り紙のワークショップが行われていました。参加者は小さな子供から高齢の方まで、日本人の図書館職員の方の指導のもと、折り紙本を読みながら様々な折り紙を作っていました。
図書館では日本関連の本の特集もなされていました。着物から食べ物、歴史まで、幅広いジャンルの本が並べられ、日本文化を紹介していました。
もちろん漫画も。なぜか団扇や皿も図書館内に展示されていました。
Malmitaloの廊下部分には外務省が出している日本紹介マガジン「にぽにか」が。「にぽにか」にはウェブ版もあります。
2階部分は書や源氏物語の絵巻物が展示されていました。
在フィンランド日本大使ご夫妻も来場されていたこのイベント。来場者は、皆興味深そうにそれぞれの催しものを楽しんでいました。この次の日には同イベントはフィンランドの古都、Turkuで行われるそうです。
先日大いに批判したジャパンウィークとは違い、ここで通訳として活躍されていたヘルシンキ大学の日本語専攻の学生さんによればちゃんと正当な対価が支払われているとのこと。よかったよかった。
*なお、イベントのプロデュースは元シリア大使の国枝 昌樹さんが会長、今回来フィンされていた堀江恭子さんが副会長を務める「 The Executive Committee of Traditional Arts of Japan, Towards the 21st Century」(たぶん日本名は「日本の伝統芸術21世紀展実行委員会」もしくは「日本の伝統芸術21世紀展望展実行委員会」。いろいろな国で同様のイベントをやっていることくらいしかネットには載ってないけど)。
(abcxyz)
2015年9月27日日曜日
通訳の仕事なめすぎ…ヘルシンキ市で開催予定のジャパンウィークが低賃金の謝礼でボラバイト募集中
10月21日から26日の間、第40回ジャパンウィークというイベントがヘルシンキで開催されます。これは公益財団法人国際親善協会(IFF)によって開かれるもので、日本文化を世界に伝え、その土地と交流するというもの。日本からは今年7月までパフォーマンスや展示などの出演/出展者を募っていました。
出演・出展者募集の案内資料(pdf形式)によれば、日本から出演、出展しようとすると、渡航費は自分で払わないといけない上に、参加料金として一人当たり3万円が必要でした。その参加料金は会場施設や「通訳やスタッフの経費」、運送費などに使用されるとのこと。
「通訳やスタッフの経費」なんて書いてありますが、名門ヘルシンキ大学のアジア研究コースの学生たちに送られてきた通訳スタッフボランティア募集メールによれば、支払われるのは人件費としては少なすぎる金額でした。
ジャパンウィークが募集しているのは、通訳とアシスタントの「ボランティア」。1時間当たり7ユーロ(約950円)の謝礼が「このイベントをヘルシンキ市と共に企画している財団法人国際親善協会から支払われ」るとのこと。
でもそこには大きな問題があります:
本来ならば参加者が通訳経費を払っているはずなのに、主催者はひどく安い賃金でボラバイトを募集している。
この問題から、気になる点を3点挙げていきます。
ひとつ:・高い能力を必要とする割の合わない低賃金のボラバイト・
ふたつ:・実際にフィンランドと日本の文化の架け橋となるのは質の悪い通訳かも・
みっつ:・参加費で通訳スタッフの費用を捻出してるはずなのに・
・高い能力を必要とする割の合わない低賃金のボラバイト・
この通訳の募集は「通訳スタッフ」ではなく「ボランティア」扱い。フィンランドには最低賃金の制度はありませんが、知識や経験がなくてもすることの可能なスーパーのレジだと時給12ユーロ(約1600円)、掃除のバイトでも9ユーロ(約1200円)ほどです。
フィンランドでは通訳の金額は最低でも手取りで一時間40ユーロ(約5400円)からです。これは以前別ブログにで批判した、鳥取市のタダ働き「鳥取市国際観光民間サポーター」と同じく、通訳が必要とする技術や知識を軽視して、正当な対価を払おうとせずに利益だけ得ようと言う姿勢です。
なお、ジャパンウィークで募集されているこのボランティア/ボラバイトの内容はこのとおり:
日本人には「日本語は難しい言語だ」と考える変な傾向があるようで、日本語をちょっとでも話すことのできる「外国人」には「日本語難しいのに喋れて凄いね」なんてよく言うにも関わらず、翻訳や通訳の能力は過小評価しています。世界の人口が70億人と言われる中で、日本語話者数は世界で1億人程度存在しますが、フィンランド語の話者は世界にわずか600万人程度しかおらず、その600万人のうちに日本語の通訳が可能な人がいる割合はかなり少ないはずです。一方、例えば英語話者は世界で7億人程度いるとされているので、英語~日本語通訳者なら安くても仕事を受ける人がいるかもしれませんが、フィンランド語と日本語の通訳という稀な技能を時間、労力、お金を費やして習得した人を、割にあわない金額で働かせようというのはもってのほか。フィンランドの通訳者は(英語はこの限りではありませんが)ほとんどが大学院卒だということも加えておきましょう。
また、安い金額で仕事を引き受けることは同業者の給料を下げることにもつながります。フィンランドでは字幕業界が低賃金化による翻訳の質の低下を招いているという問題もあります。
「それでも一時間に7ユーロの謝礼があるからいいじゃん」、「通訳できるならただでやってあげてもいいじゃん、減るもんじゃないし」と思う方もおられるかもしれませんが、これを読んでいる皆さんの仕事やバイト、専門知識を活用して普段ならお金をもらうはずのことを考えてみてください。誰かを「助ける」ためならまだしも、自分たちの事業のためにタダで働かせるなんて都合よすぎます。
しかも、みんながみんな完全なボランティアならまだしも、ちゃんと資料には「通訳やスタッフの経費」がジャパンウィークの参加費から取られていると書いてあるんです。だったらちゃんとお金を払ってあげるべきです。
・実際にフィンランドと日本の文化の架け橋となるのは質の悪い通訳かも・
もちろん、きちんとお金を払ったからといって、確認するすべがない限りは通訳がきちんと行われているのかはわかりません。でも、そもそも正当な対価を払っていないとなるとなおさら怪しいものです。映画『ロスト・イン・トランスレーション』で描かれているこのシーンは、能力のない通訳と、その能力を確認するすべのない雇い側とが揃えばどうなるのかを描いた恐ろしい情景です。この光景もきっとその元となる日本でひどい通訳の経験があって描かれるに至ったことでしょう。
ヘルシンキ大学の日本語コースはその厳しさと質の高さでも知られています。今回のボラバイト要請メールを受け取った同コースの学生らは「私達をバカにしているのか」と捉えており、参加する気はないようです。もちろん彼らだって、例えば「戦争により日本から難民が来た」などといった状況ならばボランティアで働いてくれるでしょう。しかしそれとこれとは状況が全く違うことは明白です。
レベルの高いヘルシンキ大学の学生たちが全員このボラバイトを断ったとすれば、もしかしたら映画『ロスト・イン・トランスレーション』に出てきたような質の低い通訳しか集まらない可能性があります。「でも流石に通訳がろくにできない人は雇わないだろう」とお考えかもしれませんが、ボラバイト募集メールは「フィンランド語~日本語」の通訳を募集していながらも、英語と日本語で書かれています。これはつまり募集している側にはフィンランド語と日本語の通訳能力を判断する能力がないことを示しています。
もしこれが英語と日本語の通訳ならば、義務教育で多少なりとも学んだ言語知識を使って単語程度は聞き取れるでしょう。でも「モイ!」と「キートス!」、「ムーミン」に「マリメッコ」くらいしか日本では知られていないフィンランド語。雇う側には知識が無くて通訳の質を確認できないにも関わらず、お金もろくに払わないつもりで果たしてまともな通訳者が見つかるでしょうか?
・参加費で通訳スタッフの費用を捻出してるはずなのに・
そもそも渡航費のほかにも参加者が払わないといけないジャパンウィークの参加費は、通訳やスタッフの経費にも充てられるはずじゃなかったんでしょうか?もしかしたら今回募集がかけられている翻訳ボラバイトとは別に正規の(=労働に見合った賃金を払われた)「通訳スタッフ」が存在するのかもしれません。でも参加者をホテルまで迎えに行ったりまでするボラバイト内容からも、このボラバイトのことを「通訳スタッフ」と考えても差し支えないはず。
これまでのジャパンウィーク参加者は、前述のPDFの以前の参加者と下の画像のヘルシンキでのジャパンウィーク参加者見込みによれば1000人前後。一人頭3万円なので、3000万円は会場経費、通訳やスタッフの人件費、貨物輸送費用に充てられるわけです。しかも、下画像の通りジャパンウィークはいろいろな団体が後援、助成、協賛する(予定)にもなっていますから、このプロジェクト全体ではもっと大きなお金が出ているはずです。
…それでも通訳ボラバイトは1時間につき7ユーロの謝礼しか出ないのです。現地通訳ボラバイトによって手伝ってもらうことになるのは実際に参加費を払っているジャパンウィークの参加者たちでしょう。そしてその「通訳やスタッフの経費」も自分で払っているつもりの参加者たちが、通訳の質により一番影響を受ける/被害を被るのです。そうなれば、サービスを受けるためにお金を払っているはずの参加者側も能力を過小評価されてボラバイトをする側も共に損をすることでしょう。
もし国際親善協会だけが特をしているとすれば大問題ですし、通訳やスタッフを正規の金額で雇うお金が無いなら計画が甘すぎます。
まとめ
・参加者は公益財団法人国際親善協会に「通訳やスタッフの経費」を含む参加費を払っている。
・公益財団法人国際親善協会は低賃金のボラバイトを雇おうとしている。
・通訳者としての資質と意識のある人たちはこのボラバイトをしようとしていない。
・そうなるとたぶん質の低い通訳しか集まらないが、主催者側には確認するすべがない。
つまり
・国際親善協会の通訳に対する姿勢・計画は甘すぎる
・提案・
そもそもちゃんとした通訳スタッフをちゃんとした金額で雇えないのであれば、参加費用を上げるとか、ちゃんと助成金を取ってくるなどすべき。それができないのであれば、日本から可哀想な通訳ボラバイトに旅費くらい出してやって連れて来てやるべき。
今回はまだ開催まで日にちがあるので、どうにかお金を支払うことも不可能ではないでしょう。だが、公益財団法人国際親善協会がもし、言語による意思の疎通を含めた国際親善を行いたいのであれば、通訳くらいは正当な対価を払って雇うべきであり、そうする意向がないのであれば、『ロスト・イン・トランスレーション』状態になっても仕方がありません。そしてそうなってもまだ国際親善を図ろうとするのであれば、日本の文化その他が間違って伝わってもしょうがないでしょうね。
批判があればコメント欄でどうぞ。
*実際に参加しての感想はこちらの投稿に記しています*
(画像は出演・出展者募集の案内資料(pdf形式)とJapan Week Helsinki 2015からのEメールからの引用)
(abcxyz)
出演・出展者募集の案内資料(pdf形式)によれば、日本から出演、出展しようとすると、渡航費は自分で払わないといけない上に、参加料金として一人当たり3万円が必要でした。その参加料金は会場施設や「通訳やスタッフの経費」、運送費などに使用されるとのこと。
「通訳やスタッフの経費」なんて書いてありますが、名門ヘルシンキ大学のアジア研究コースの学生たちに送られてきた通訳スタッフボランティア募集メールによれば、支払われるのは人件費としては少なすぎる金額でした。
ジャパンウィークが募集しているのは、通訳とアシスタントの「ボランティア」。1時間当たり7ユーロ(約950円)の謝礼が「このイベントをヘルシンキ市と共に企画している財団法人国際親善協会から支払われ」るとのこと。
でもそこには大きな問題があります:
本来ならば参加者が通訳経費を払っているはずなのに、主催者はひどく安い賃金でボラバイトを募集している。
この問題から、気になる点を3点挙げていきます。
ひとつ:・高い能力を必要とする割の合わない低賃金のボラバイト・
ふたつ:・実際にフィンランドと日本の文化の架け橋となるのは質の悪い通訳かも・
みっつ:・参加費で通訳スタッフの費用を捻出してるはずなのに・
・高い能力を必要とする割の合わない低賃金のボラバイト・
この通訳の募集は「通訳スタッフ」ではなく「ボランティア」扱い。フィンランドには最低賃金の制度はありませんが、知識や経験がなくてもすることの可能なスーパーのレジだと時給12ユーロ(約1600円)、掃除のバイトでも9ユーロ(約1200円)ほどです。
フィンランドでは通訳の金額は最低でも手取りで一時間40ユーロ(約5400円)からです。これは以前別ブログにで批判した、鳥取市のタダ働き「鳥取市国際観光民間サポーター」と同じく、通訳が必要とする技術や知識を軽視して、正当な対価を払おうとせずに利益だけ得ようと言う姿勢です。
なお、ジャパンウィークで募集されているこのボランティア/ボラバイトの内容はこのとおり:
日本からのJapan Weekに参加する団体をホテルまで迎えに行っていただき、学校訪問の際に、披露する文化交流プログラムの説明、また、ワークショップの際の通訳とアシスタントをしていただけるボランティア
日本人には「日本語は難しい言語だ」と考える変な傾向があるようで、日本語をちょっとでも話すことのできる「外国人」には「日本語難しいのに喋れて凄いね」なんてよく言うにも関わらず、翻訳や通訳の能力は過小評価しています。世界の人口が70億人と言われる中で、日本語話者数は世界で1億人程度存在しますが、フィンランド語の話者は世界にわずか600万人程度しかおらず、その600万人のうちに日本語の通訳が可能な人がいる割合はかなり少ないはずです。一方、例えば英語話者は世界で7億人程度いるとされているので、英語~日本語通訳者なら安くても仕事を受ける人がいるかもしれませんが、フィンランド語と日本語の通訳という稀な技能を時間、労力、お金を費やして習得した人を、割にあわない金額で働かせようというのはもってのほか。フィンランドの通訳者は(英語はこの限りではありませんが)ほとんどが大学院卒だということも加えておきましょう。
また、安い金額で仕事を引き受けることは同業者の給料を下げることにもつながります。フィンランドでは字幕業界が低賃金化による翻訳の質の低下を招いているという問題もあります。
「それでも一時間に7ユーロの謝礼があるからいいじゃん」、「通訳できるならただでやってあげてもいいじゃん、減るもんじゃないし」と思う方もおられるかもしれませんが、これを読んでいる皆さんの仕事やバイト、専門知識を活用して普段ならお金をもらうはずのことを考えてみてください。誰かを「助ける」ためならまだしも、自分たちの事業のためにタダで働かせるなんて都合よすぎます。
しかも、みんながみんな完全なボランティアならまだしも、ちゃんと資料には「通訳やスタッフの経費」がジャパンウィークの参加費から取られていると書いてあるんです。だったらちゃんとお金を払ってあげるべきです。
・実際にフィンランドと日本の文化の架け橋となるのは質の悪い通訳かも・
もちろん、きちんとお金を払ったからといって、確認するすべがない限りは通訳がきちんと行われているのかはわかりません。でも、そもそも正当な対価を払っていないとなるとなおさら怪しいものです。映画『ロスト・イン・トランスレーション』で描かれているこのシーンは、能力のない通訳と、その能力を確認するすべのない雇い側とが揃えばどうなるのかを描いた恐ろしい情景です。この光景もきっとその元となる日本でひどい通訳の経験があって描かれるに至ったことでしょう。
ヘルシンキ大学の日本語コースはその厳しさと質の高さでも知られています。今回のボラバイト要請メールを受け取った同コースの学生らは「私達をバカにしているのか」と捉えており、参加する気はないようです。もちろん彼らだって、例えば「戦争により日本から難民が来た」などといった状況ならばボランティアで働いてくれるでしょう。しかしそれとこれとは状況が全く違うことは明白です。
レベルの高いヘルシンキ大学の学生たちが全員このボラバイトを断ったとすれば、もしかしたら映画『ロスト・イン・トランスレーション』に出てきたような質の低い通訳しか集まらない可能性があります。「でも流石に通訳がろくにできない人は雇わないだろう」とお考えかもしれませんが、ボラバイト募集メールは「フィンランド語~日本語」の通訳を募集していながらも、英語と日本語で書かれています。これはつまり募集している側にはフィンランド語と日本語の通訳能力を判断する能力がないことを示しています。
もしこれが英語と日本語の通訳ならば、義務教育で多少なりとも学んだ言語知識を使って単語程度は聞き取れるでしょう。でも「モイ!」と「キートス!」、「ムーミン」に「マリメッコ」くらいしか日本では知られていないフィンランド語。雇う側には知識が無くて通訳の質を確認できないにも関わらず、お金もろくに払わないつもりで果たしてまともな通訳者が見つかるでしょうか?
・参加費で通訳スタッフの費用を捻出してるはずなのに・
そもそも渡航費のほかにも参加者が払わないといけないジャパンウィークの参加費は、通訳やスタッフの経費にも充てられるはずじゃなかったんでしょうか?もしかしたら今回募集がかけられている翻訳ボラバイトとは別に正規の(=労働に見合った賃金を払われた)「通訳スタッフ」が存在するのかもしれません。でも参加者をホテルまで迎えに行ったりまでするボラバイト内容からも、このボラバイトのことを「通訳スタッフ」と考えても差し支えないはず。
これまでのジャパンウィーク参加者は、前述のPDFの以前の参加者と下の画像のヘルシンキでのジャパンウィーク参加者見込みによれば1000人前後。一人頭3万円なので、3000万円は会場経費、通訳やスタッフの人件費、貨物輸送費用に充てられるわけです。しかも、下画像の通りジャパンウィークはいろいろな団体が後援、助成、協賛する(予定)にもなっていますから、このプロジェクト全体ではもっと大きなお金が出ているはずです。
…それでも通訳ボラバイトは1時間につき7ユーロの謝礼しか出ないのです。現地通訳ボラバイトによって手伝ってもらうことになるのは実際に参加費を払っているジャパンウィークの参加者たちでしょう。そしてその「通訳やスタッフの経費」も自分で払っているつもりの参加者たちが、通訳の質により一番影響を受ける/被害を被るのです。そうなれば、サービスを受けるためにお金を払っているはずの参加者側も能力を過小評価されてボラバイトをする側も共に損をすることでしょう。
もし国際親善協会だけが特をしているとすれば大問題ですし、通訳やスタッフを正規の金額で雇うお金が無いなら計画が甘すぎます。
まとめ
・参加者は公益財団法人国際親善協会に「通訳やスタッフの経費」を含む参加費を払っている。
・公益財団法人国際親善協会は低賃金のボラバイトを雇おうとしている。
・通訳者としての資質と意識のある人たちはこのボラバイトをしようとしていない。
・そうなるとたぶん質の低い通訳しか集まらないが、主催者側には確認するすべがない。
つまり
・国際親善協会の通訳に対する姿勢・計画は甘すぎる
・提案・
そもそもちゃんとした通訳スタッフをちゃんとした金額で雇えないのであれば、参加費用を上げるとか、ちゃんと助成金を取ってくるなどすべき。それができないのであれば、日本から可哀想な通訳ボラバイトに旅費くらい出してやって連れて来てやるべき。
今回はまだ開催まで日にちがあるので、どうにかお金を支払うことも不可能ではないでしょう。だが、公益財団法人国際親善協会がもし、言語による意思の疎通を含めた国際親善を行いたいのであれば、通訳くらいは正当な対価を払って雇うべきであり、そうする意向がないのであれば、『ロスト・イン・トランスレーション』状態になっても仕方がありません。そしてそうなってもまだ国際親善を図ろうとするのであれば、日本の文化その他が間違って伝わってもしょうがないでしょうね。
批判があればコメント欄でどうぞ。
*実際に参加しての感想はこちらの投稿に記しています*
(画像は出演・出展者募集の案内資料(pdf形式)とJapan Week Helsinki 2015からのEメールからの引用)
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2015年9月19日土曜日
フィンランド版プッチンプリン?「Valio Kermavanukas」製品パッケージデザインは日本のほうがやっぱり上だった
日本を一歩外に出ると、日本の製品のパッケージがどれだけ利用者の視点に立って作られているの気づかされます。
例えばフィンランドでは、お店で売られている肉が入っているプラスチックの入れ物が非常に開けにくく、明け口がついているのにそこから開けようとすると容器の上面が引き裂かれるようになって結局開けられなかったり…
そんななかで、フィンランドの乳製品会社Valioが、(たぶん)フィンランド初のプッチンできるプリンを発売しました。
それがValio eilaブランドの「Kermavanukas」(クリームで作られたプリン)。
日本のプッチンプリンの、底についている棒状の部品をプチっと折るだけでプリンっ!とお皿の上にプリンが滑り出す洗練された感じはありません。裏面を三回も押して、しばらく待ったら出てくるというわけです。
どんなもんか、実際に試してみました。今回試したのはVadelma味(ヨーロッパキイチゴ味)です。
実際にやってみるとなかなか大変。やっぱりこういうところで日本の商品のすごさを感じちゃいますね。
ベース部分のお味のほうは、クリームで作られたプリンといっても、日本の「クリームプリン」とか「生クリームプリン」とか言ったものとは全然違い、フレッシュチーズの一種でクワルクとも呼ばれるRahkaから酸味を引いたような触感とお味でした。
日本のプリンの感覚で食べると「なんだこれ!?」となるかもしれませんが、好きな人は好きになる系の味だと思います。キイチゴソースはおいしかったです。
(abcxyz)
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