フィンランド最大の鉱害問題となっているTalvivaara鉱山(実際には山ではなく、露天掘り)。フィンランド最大のニッケル鉱山なのですが、2012年にその採掘に用いた有毒な水を溜めていたプールからニッケル、ウラニウムなど毒性の金属が含まれた水が川に流れてしまいます。2013年にもまた毒水が漏れ出たりして、結果として川のみでなく、地下水にまで浸透。非常に莫大な影響を環境に与えました。
これはTalvivaaran Kaivososakeyhtiöという会社の持っていた鉱山であったのですが、フィンランドはこの問題に対処するため国として資金を投じます。被害の規模は違いますが、日本で例えるならば、福島の原発の後始末に国がお金を出しているのと同じ形です。しかし結局Talvivaaran Kaivososakeyhtiö社は2014年に倒産。
2015年には国営企業TerrafameがTalvivaara社から鉱山を買い取り、採掘を続行。その後この鉱山は何度も野党から「閉鎖しろ」との声が上がりますが、潰れたTalvivaaran Kaivososakeyhtiöを
Suomen Keskusta / フィンランド中央党(独裁国家に武器輸出をし始めた党)の党首で(税金逃れをしている)総理大臣のJuha Sipiläは、鉱山から採掘できる鉱物の価格が国際的に上がっているなどとし、環境問題を直し、これからも採掘を続けようと国から巨額の出資を行います。
しかし、先週金曜YLEの報道がことを大きくします。Sipiläは鉱山まで行き、視察、社長らと面会。何か怪しいと勘ぐったメディアが調べ始めたのか、間もなく、営業している鉱山がSipiläの親戚、子供や叔父、従兄弟などが持つ会社Katera Steelから50万ユーロ(約6050万円)もの大きな契約を結んでいたことが明るみに出ました。
この契約は、 Sipilä政府がTerrafameを支援するために追加で1億ユーロ(約121億円)を投じた直後に結ばれたもので、もちろんSipiläもその決定に関わっています。
そもそも、何らかの決断を行う時に、決断が自分に利害関係のある会社などに関係したものであれば、自らが怪しまれないためにも(何もうらましいことがなくとも)決定権限を辞退するなりそれを証明する書類を出したりするべきです。
Sipiläは当然ながらなぜそうしなかったかと追求されており、国会の委員会もこれから調査に乗り出します。
しかしこれをYLEが報道した後、Sipiläはこれを自分への攻撃へと感じたようで、YLEの記者に午後11時以降20通もメールを送りつけています。その最後のものには「私のYLEに対する尊敬は現在ゼロです。もちろんあなたの私に対する尊敬も同じでしょう。これで対等ですね。」などと記されていました。
そして日曜。YLEの編集長が、すでにこの件に関する編集待ちの記事が存在したにもかかわらず、この件に関する報道はもうしないと決断。有名な政治トークショーA Studioでもこの件のためにSipiläも呼ばれていて、出演するはずだったにも関わらず、それもなしになってしまいます。
しかしSuomen Kuvalehti紙がこれを追求。月曜日の朝刊でYLEの記者たちからの匿名の情報提供を受けた記事を公開。YLEの記者は「多数のメールが総理からきたから中止になったんだと思う」(上記したメールが20通送られた件やその内容もこの時点で判明)。
次の日、YLE編集長は「国営メディアの役割は平等にバランス良く、重要性を考えて出すべき、重要性の割に生地を出しすぎていた。あまり攻めればYLEひとりでスキャンダルを作り上げていることになる」などと声明を発表。
この件に関する記事本数を減らすのと、この件を全く報じなくするのとでは全然違う話です。国営放送は、自国の政府や政治家をも批判できる独立性こそが重要です。そうでなければ某国のように政府の都合のいい話ばかり報道する国営放送になってしまいます。
Sipiläは後に記者会見で「YLEに対する信頼はまあ、OK」と発言しています。
フィンランドは世界の報道自由度ランキングでもトップであることでも有名、汚職度が世界的に低いことでも知られていますが、「Hyvä veli」文化のあるフィンランドで実際にこれを信じている人はどれだけいるのか怪しいもの。
知り合いのフィンランド人は「昔から汚職だらけだということは知ってた」と言う人や「汚職にも色々な種類があるが、汚職がない国というのは言い過ぎ」と言う声も。なおこの問題はイギリス国営放送BBCも取り上げています。
[via YLE, Wikipedia - Talvivaara Mining Company]
(abcxyz)
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