ラベル 社会福祉 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 社会福祉 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年1月15日火曜日

ベーシックインカム実験って結局なんだったの?その背景と現状


ベーシックインカムの実証実験が2017年1月より始まり昨年末に終わりを迎えたフィンランド。この機会にベーシックインカムを今一度考え、実験の現状を見てみましょう。

日本でも話題になった「ベーシックインカム」ですが、一体これがどういうもので、どういう状況になっているかは日本のみならず他国のメディアでも誤った情報が飛び交う有様でした。日本では当初ベーシックインカムが施行されるという報道がありましたが実際には「実証実験が行われる」という内容が間違って伝えられたものですし、2018年4月頃には実証実験が途中で終了されるとの報道が海外メディアで報道されていましたが、実際には「当初の予定通り」2018年末まで実証実験が行われました。

ベーシックインカムとは


フィンランドのベーシックインカム(フィンランド語で「perustulo」)のアイデアは、社会保障の一つであり、全国民が一律無条件に非課税のお金を毎月もらえるというものです。

これだけ聞くと、「ただでお金がもらえるのか!なんて凄い!」と思われるかもしれませんが、医療費の一部を国が負担する国民健康保険や、医療費控除、児童手当、義務教育、年金、失業給付金なども同じく社会保障です。そしてその主な財源は税金となっています。

しかし、これらは皆、国と国民との間で交わされる社会契約の元に成り立っているものです。文脈に合わせて単純化して言えば、国民としての義務を果たせば国が国民を守る、という約束であり、程度や内容は異なっても近代の憲法はこのような国と国民の間の約束の上に成り立っています。これは日本でも同じことです。

なぜベーシックインカム?


さて、そんな社会保障の一部であるベーシックインカムですが、これが実証実験される背景には「労働」の形が変化しつつある現状があります。国が定めた最低限の生活を守るための社会保障システムは長い年月をかけて形作られてきたものですが、現在の労働形態や生き方には合わなくなっており、逆に社会保障の提供を阻害する状況になっているのです。

絶え間なく進む工業の自動化に、更にデジタル化も進む現在は、これまで多くの人を必要としていた労働で人手が必要なくなったりしています。更にフィンランドでは正社員が減り、パートタイムや期間契約で働かざる負えない状況に居る人々も増えてきています。それらに加えて、近年は特にギグ・エコノミーという単発や短期の仕事を請け負うという、終身雇用やパートよりも収入の不安定さの高い労働環境も増えています。

フィンランド国営放送YLEは、現在人口550万人ほどのフィンランドには「働く貧困層」ワーキングプアが6万人いるとしています。そしてこのほかにもワーキングプアの統計に含まれていないものの同様に貧困の危機にある、ギグ・エコノミーで収入を得ると共に社会保障で不足を補う人々が10~40万人がいると報じています。

このように変化する労働の形に現状の社会福祉が対応しきれていないという問題が実証実験のひとつの背景にあります。そこで新たな社会保障モデルとして提案されているのがベーシックインカムなのです。

従来型の社会保障



フィンランドは学生手当、子育て手当、生活保護や失業手当なども充実している印象をお持ちの方も少なくないでしょう。フィンランド社会福祉保健省は、「社会福祉保障の中心的役割は、弱い立場に居る人に支援を提供すること」にあるとしており、このような手当による所得保障でこれを実現しています。しかし現状では、これらの手当の条件は複雑であり、現在の働き方に合っていない面もあるのです。

例えば、失業支援金に含まれる基本失業手当は、一ヶ月約697ユーロとされています。しかし失業者がより積極的に労働するようにと最近導入された「アクティベーションモデル」により、65日間の期間内に最低18時間の労働をするか、個人事業主として241ユーロ稼ぐか、5日間雇用促進アクティビティに参加しないと減らされてしまいます。その一方、300ユーロを超えた収入は基本失業手当減額調整の対象となります。また、基本失業手当最大受給日数の400日間を超えた場合は、労働市場補助金という失業支援金を受けることになりますが、こちらも一月311ユーロ以上の収入があると減額されます。

失業手当とは別に家賃手当が支払われるという面もありますが、家賃や医療費を除く生活保護の基本受給金額が一人住まいでは月491ユーロであることを考えても月697ユーロというのはとても低いのも事実です。失業手当でもらえる金額が低いのは、より良い生活を目指すことが就労への意欲となるという面もあるでしょう。その一方で、この金額に満足して働かない人も存在したために導入されたアクティベーションモデルですが、そもそも失業状態で18時間の労働や241ユーロを稼ぐ仕事を見つけることが困難ですし、雇用促進アクティビティは田舎では用意されていない場合もあり、それを理由に手当が減額されるのでは失業状態にいる者を支援する制度としての意味が無いとも批判されています。

加えて現状の失業支援制度では、失業事務所の提案する仕事を受けないと失業支援金を受け取ることができなくなりますが…若い女性がトップレスバーでのウエイトレスの仕事を提案され、拒否したために支援金を受け取ることができないということもありました。

前述したYLEの報道でのワーキングプアの定義は一月の収入が1200ユーロ以下とされていますが、もし失業支援制度の対象となる人であれば収入が月に1200ユーロあったとしても(例えばパートやギグ・エコノミーなどからの収入)毎月230ユーロほどは失業支援金がもらえる状況となっています。しかし、自営業やフリーランスなどであれば失業状態と見なされないために1200ユーロの収入が合っても失業支援金がもらえないという変なことになっています。

もちろんこれらの手当を受給するには様々な書類を提出しなければいけませんし(提出はオンラインで済ませることができますが)、書類はKELAにより審査された後に決断が下されます。この審査は人の手により行われるのでもちろん間違えが起こる可能性もありますし、不服申し立てもできます。また手当を受けている間に収入があれば細かく計算され手当金額が減額されるなどの手間も受給者、KELAの双方に掛かるのです。つまり保障を受ける側にとってだけでなく、保障を与える側もそれぞれの受給者に対し複雑な審査を行うという手間を取らせることになります。

この例でも社会保障手当とその受給の複雑性、現代の労働形態に合わなくなり、逆に社会福祉保障の提供を阻害している状況が垣間見れるかと思います。それだけれなく、社会保障を受けることを恥と感じたり、提出書類の煩雑さや、そんなことをしている暇が無いなどで、生活保護や家賃手当などを受けていない人々がいるのも事実ですし、中には自分が受けるべき立場に居ると知らない人もいることでしょう。それらの人たちは社会の枠組みの中で弱い立場におり支援が提供されるべきとされる存在ですが、現在の制度では彼らに効率的に支援を提供することはできません。

また、2012年、2017年、そして昨年6月にも欧州委員会から、フィンランドは失業支援金も生活保護の金額も欧州社会憲章に違反する低い金額となっており、改善が求められているということも忘れるべきではないでしょう。フィンランド外務省らは2015年、欧州委員会は複数の手当を組み合わせることができ、医療費の上限がある点を考慮しておらず、これは違反に当たらないと反論していますが、そもそも複雑すぎる社会保障制度であることも問題でしょうし、反論後も欧州委員会から改善が求められている点には、このシステムには改善の余地があるということが現れているでしょう。

*なおこれらは記事執筆時点の情報であり、なおかつ簡略化して記しているものです。実際にはこのほかにも家賃手当などが別に存在し、それぞれの手当受給状況も金額に影響するほか、手当受給者が個人か家族かなどにより収入として換算される金額に下限もありますので、上記の例は引用には適しません。また、金額も毎年変更されます。正確な情報を知りたい方はKELAのウェブサイトをご覧ください。

実証実験


そんな中、時代により変化する労働形態に合わせて従来型の社会保障を変化させ、これによりより人々が働きやすくなり、不安定な収入を持つ人も安心して暮らせるようにするために現れたのがベーシックインカムというわけです。

社会的に弱い立場にありながら様々な理由で保障を受けて来なかった、受けることが難しかった人々を残すことなく支援することができます。自営業にフリーランス、ギグ・エコノミーや0時間契約のパートなど、これまで失業支援を受け辛かった人にとって、安定した生活を保ちながら働きやすい状況をつくります。また、自分に合った仕事を探している人に取っては、安定した受け皿の元で様々な仕事に挑戦しやすくなるという点も興味深いことでしょう。そして支援を受ける側も、社会保険庁も共に審査に費やす労力を減らすことができます。もちろん、収入が多ければその分は所得税として納税されることでこれがまたベーシックインカムの財源となるわけです。また賛成派の意見としてはKELAの人材に掛かるコストを減らすことができるため、現行制度よりも安上がりになるともしています。

もちろんフィンランド国内でも皆が諸手でベーシックインカムに賛成というわけではありません。反対派の意見としては、現行制度よりも高く付くため税負担が高くなるという点も挙げられます。現在安定した仕事を持っている人が、仕事を辞めて働かなくなってしまう可能性が指摘されています。そうなればお金を多く稼いでいる人の税負担と共に不公平感も増すことでしょう。また、男女平等のフィンランドと言えども子育てに関して女性の参加の方が多い状況であり、ベーシックインカムにより主婦になる女性が増え、それが女性の社会的立場を弱くするのではという指摘もあります。生活保護では考慮される個人の貯蓄が現状のベーシックインカム案では考慮されないという点も問題視されています。

賛否両方の意見がある中2017年1月1日に始まった実験は、2018年12月31日まで行われました。実験にはフィンランド国民から25歳から58歳の人から2000人が選ばれ、一月に560ユーロがベーシックインカムとして支給されています。このベーシックインカムは所得税対象とはならず、この金額を考慮に入れず失業支援金なども同時に受けることができます。なおフィンランド国外に30日間以上滞在する際にはベーシックインカムが支払われなものの、帰国すればまたベーシックインカムを受け取ることができるようになっています。

実験の結果今回の実験が雇用に与えた影響は2019年末から2020年初め頃に発表される予定です。

果たして良い実験か?



実際のベーシックインカムのアイデアは、国民誰もが等しく国からお金をもらえるというものですが、今回の実験はといえば実験として有用な結果を出せるかどうか怪しいとの声も聞こえます。

その理由は、ベーシックインカムは仕事のある人も失業者も、富めるものも貧しいものも平等に与えられることこそがその根本であるのに、実証実験に選ばれた2000人は2016年末の時点でKELAから失業給付金をもらっている人たちの中からのみ選ばれているからです。

ベーシックインカムに対する批判意見として、「何もしなくてもお金をもらえるのだから人が働かなくなる」というものがありますが、そもそも実験対象が失業者だけであればこの批判に関連する比較が可能な対象は必然的にベーシックインカムの抽選から漏れた失業者のみとなります。つまり、普通に失業給付金をもらっている失業者と比べて、ベーシックインカムをもらっている失業状態のものはどれだけ就職に対する意欲があり、実験期間中に就職に向けてどう動いたか、だけを焦点とすることしかできません。

一方この批判意見に本当に答えるために行うべき実験は、現在仕事がある人がベーシックインカムをもらうことで仕事に対する意欲がどれだけ低下するか、仕事を辞めるかどうか、などもポイントとなるはずです。

また、今回の実験に対する批判としては、一ヶ月にもらえる金額が少なすぎるため、結局生活保護その他の社会保障も同時に受けなくてはならず、受給審査などの煩わしい部分が解消されていないという点も挙げられています。

その先


もしもベーシックインカムを実施しようという気があるのであれば、よりコンセプトに沿った形の実験が望まれるところでありますが、現在のところはベーシックインカムの更なる実証実験は予定されていません。ベーシックインカムが導入されるかどうかは別としても、手厚い社会保障で知られてきたフィンランドが今後どこまで時代に即した形で社会保障を変えていくことができるのかは多くの国々が注目をしているところでしょう。

まずは実験の結果を待ちたいところではありますが、ベーシックインカムの実験はスイスでももうじき行われるようですし、カナダ、オランダ、アメリカなどでも注目を浴びています。


Source: YLE, STM, Ihmisoikeusliitto, YLE 2, KELA

(abcxyz)

2018年1月31日水曜日

旅行者の方ご注意!フィンランド全国で金曜にスト。交通などに影響の恐れ



今週の金曜日はフィンランド全国のほとんどの市内公共交通機関を含む運転系の仕事がストライキする予定です。これにはバス、トラム、メトロなどが含まれますのでご注意ください。電車、飛行機、タクシーはストはなし。しかしその為電車やタクシーは混む可能性もあります。


今回のストの原因は政府が労働組合との合意を破ったことにあります。まず、フィンランド中央労働組合「SAK」というのがあります。これは18の労働組合からなり、中には公務員組合、工業組合、運行組合、サービス業組合、鉄道組合などが含まれ、会員数は100万足らず。

政府はフィンランドの国際競争力を高めるための「Kilpailukykysopimus」競争契約に関連して、公務員の有給休暇金や祝日を減らそうとしました。政府は、これに皆が納得すれば失業支援金には変更を加えない、としたため、組合側はしぶしぶこれに承知。政府は公務員の有給や祝日を減らしました。しかし政府は約束は無視して、討論もままならないまま12月28日に失業者支援金変更案「Aktiivimalli」(アクティブ・モデル)に許可を出し、今年1月より施行しました。

政府が労働組合を裏切った形になったため、中央労働組合がデモを行うことに。これに際し、傘下の組合にストライキに参加要請したために今回のストが行われるというわけです。中には中央労働組合傘下ながらもストライキには参加しないところもあり、例えば鉄道、航空、サービス業の組合などはストに参加していません。

今回施行された失業支援金変更では、新たに失業者は65日以内に以下の3つの条件のいずれかを満たさなければならないということになっています。

・18時間の賃金労働(バイトとか)をしなくてはならない
・自営業で241ユーロを得る
・失業支援事務所の支援アクティビティに5日換算か(自分でコースに通う、インターンなどでもありのよう)

もしどれも満たしていなければ、次の65日間に与えられる支援金は4.65%減らされる、というもの。失業者がより「アクティブ」でないといけないので「Aktiivimalli」(アクティブ・モデル)と呼ばれています。失業支援金は失業している日数で換算されるため、4.65%減は一ヶ月にもらえる失業支援金が一日分減ることと同等のよう。

大したことない変更に思えますが、この変更が一番問題になるのは街ではなく田舎のはず。つまり、そもそも仕事が存在せず、バイトしようにもそんな機会がなく、失業支援所がそもそも何もアクティビティをやっていないような状況の町に住んでいれば、どんなに自分が努力しようとしても支援金が下がってしまう状況に置かれるアンフェアさがあるのです。


YLEのコメントの半数は「ここまでおおきなストライキでないと政府に声を伝えられない。政府は嘘つき。国民や組合は怒っているという事を示すために、そして誰もが自らも失業する可能性を意識しているからこれを行うのだ。」というもの。

しかしもう半数は「政府は民主主義で投票で選ばれたが、組合は違う。組合が民主主義と戦っているようだ。頑張って仕事をしている私たちにとってはストのせいで仕事にいけなかったら無休で休むか有給休暇を使うことになる。なぜ必死で何もしない失業者の1日分のお金を私の1日分のお金で守らねばならないのか。迷惑だ。そもそも失業者にアクティブな活躍が求められるのに何が悪いのか。」という感じのもの。

今年はフィンランド内戦から100年ですが、このタイミングでの大規模ストライキ(内戦前にもゼネストがあった)、今後の政府や労働組合の動きにも注目です。


Source: SAK, YLE

(abcxyz)

2016年5月12日木曜日

連載・さらば福祉国家 「Hyvä veli」ようこそ汚職国家フィンランドへ

Transparency.orgの発表する世界汚職度指数では、2015年には168か国中2番目に汚職度の低い「キレイな」国とされているフィンランドですが、クリーンなイメージは上っ面だけかもしれません。

前回の政府の途中から福祉健康担当大臣であり、今日までヘルシンキ市の福祉健康担当副市長Laura Ra:ty(Kansallinen kokoomus / 国民連合党)だった人が急に辞職。そして複数の私立病院チェーンを所有する巨大企業Terveystaloの代表取締役に就任することを今日発表しました。Terveystaloはフィンランドのたくさんの会社と労働者への健康サービスの提供契約を結んでいる民間企業。

今のフィンランドの医療システムはよくない、というのはどの政党も合意しているところで、前々回の政府の時からこれを変えようという動きが続いていました。現在のSipilä政権は医療も民間化しようとしています。こうすることで競争が生まれて医療サービスの質が高まるのではないか、ということです。

しかし、だからこそ民間化にかかわる政治家が医療企業に急に転職するのは異常なのです。つまり、政府の中で福祉健康を担当して、後で自分がつく役職を自分に都合いい状況に変えていから転職したというわけ。まだ公になっていない情報も持っていることでしょう。これが汚職でないとすれば一体なんだというのでしょうか?

しかもKokoomusはなんと去年も似たようなことがありました。ヘルシンキ市のKokoomus委員会の委員長であったLasse Männistöが途中で自ら辞職、Mehiläinen(これもやっぱりTerveystaloのように巨大で似たような医療系の民間企業です。税金回避の疑いも取り上げられている)に就職したのです。



フィンランドには「Hyvä veli」(良い兄弟)という言葉があります。これはいわゆる「コネ」であり、学歴や経験が重視される、と言われるフィンランドでも、実は一番就職その他、またクビにならないためにも重要な要素がこれです。大学で知り合った友達や後輩をどこかに紹介して雇ってもらうようなものもこれに含まれるのですが、会社の中で仕事の後に飲みに行ったりサウナに行ったりして仲のよくなった人たちの間で、実績などを見ることなしに仲のいい人を昇格させたり、小さな自治体で、友達が持っている経済的に損失を出している工場を自治体が買い取ったり、なども「Hyvä veli」の例として挙げられます。ただし、昔はあったようではありますが、今の時代は大学にHyvä veliで裏口入学をするなどはできないようです。



企業間でのこういった転職では、辞職後に同じ業界の他の企業に入る場合には何か月か時間を空けてからでないと入れないという仕組みがありますが、今回の件を受けてこの仕組みが今回のようなケースにも当てはめられるべきだという声も上がっています。


[via Helsingin Sanomat]

(abcxyz)

2016年5月1日日曜日

連載・さらば福祉国家 ヘルシンキ大学でクビにならないために必要なのは実績よりも「政治や家族」の力

ヘルシンキ大学でクビを宣告された生物学のHeikki Hänninen教授が、なぜ自分がクビになったのかといろんなところに聞いてみた。その人は皆から好まれているようだし、彼のおかげでお金も入ってきているそう。環境学科長は、学部トップの話し合いの中でこういう話が出てきたと:「あなたより成功していないけれども、政治/家族・親戚的な力がある人をクビにすることができず、あなたをクビにしました」と。教授としての実績は低くても、力のある家族を持つ教授はクビにならなかった。学生が困るとか大学が困るのではなく、クビにしても大学のトップが一番困らない選択がなされたとのことだ。

だがこの人は中国の大学からすぐに働かないかとお声がかかったそう。

ヘルシンキ大学からクビになったのは合計570人。それでもその多くは事務職で、クビになる教授は総数からするとだいぶ少ないようだ。ヘルシンキ大学の学生が言うには、スウェーデン語学科の成績を登録する職員がクビになり、学生たちが困ったりなどの混乱が生じているようだ。

なおここまで酷いやり方で「節約」して批判されているのはフィンランドの中でもヘルシンキ大学くらいなもの。トゥルク大学はあまり使われていない建物を売却するなどして、「節約政治」に対処しているし、他の大学でも退職した人の後に新規に雇わないことなど、より人間的な方法で節約している。

*ヘルシンキ大学全職員は8000人ほど、うち4000人ほどが教員だそうだ。学生数は1万9000人。2012年における数値。


[via HS]

(abcxyz)

2016年3月13日日曜日

連載・さらば福祉国家 首都大規模デモ:与党党首らに「私たちは絶対屈しない!」

昨日、政府の「節約政治」に反対するデモが行われたと書きましたが、デモ参加者によれば、その時のシュプレヒコールはこちらでした。

「Soini, Stubb, Sipilä, emme alistu ikinä!」

「Soini、Stubb、Sipilä、私たちは絶対に屈しない!」この3つの名前はフィンランドの与党三党の党首たちの名前、(Timo) Soini, (Alexander) Stubb, (Juha) Sipiläのことです。

「Perussuomalaiset / 真のフィンランド人党」党首 Timo Soini 外務大臣
「Kansallinen kokoomus / 国民連合党」党首 Alexander Stubb 財務大臣
「Suomen Keskusta / フィンランド中央党」党首 Juha Sipilä 総理大臣

このデモには1万人が集まったそう(と伝え聞くものの、一応Yleは「警察の見積もりでは8000人程度」としています。ただ、警察の見積もりはフィンランドではどのデモに対しても少なく見積もる傾向があるそう)。フィンランドの人口は約550万人なので、これは非常に大きなデモです。例えば昨年のTTIP反対デモは1000人集まっています(AFP曰く。Yleの報道では800人)。

フィンランド人ですら今の政府には希望が持てない今、果たして次期全国選挙の2019年までに国はいい方向に変わっていけるでしょうか?

政府としては、現在悪い立場にいる人たちがお互いに怒りの矛先を向けあうようになればいいとみているのでしょう。これのいい例は何かというと、世界の多くの国で状況が悪くなると政治が右翼的になる傾向がみられることです。本当の問題点を覆い隠し、例えば国内にいる移民や帰化した人、外国に憎しみを注ぐような党(例えば真のフィンランド人党とか)に人気が出るのです。

または、例えば高齢者と学生が互いに、「高齢者は年金もらいすぎだ!」、「若者は学生支援金もらいすぎだ!」などといがみ合う状況になれば、立場の悪い低所得者の負担が高くなっているにもかかわらず、高所得者の負担は低くとどまっている状況が隠されるというわけです。日本でも、中国や韓国など近隣諸国に国民の視点を向けさせようとする日本の現政府や、それに加えて国民にとっては直接関係のない芸能問題などを政治よりも大きく取り上げるメディアなども同じ事でしょう。

今回のデモでは、そんな状況にある学生、若者、失業者、高齢者、障がい者、皆が一丸となって政府に立ち上がったデモということで、私の周りではこのデモを高く評価する声が聞かれます。

なお、今回聞かれたシュプレヒコールは実は昨年にも叫ばれていたものです。昨年11月、すでに大学から節約することが決まっていた状態で、ヘルシンキ大学が式典のスピーチに財務大臣であるStubbを招待しました。教育から節約するという公約違反に、大学教授も含め1000人以上首になるかもしれない、そんな中でこの「節約」に責任のある財務大臣Stubbがヘルシンキ大学にスピーチのために招待されることが、大学の学生と職員たちの怒りを買いました。学生たちは大聖堂側のロビーでデモをしており、その時に使われたシュプレヒコールもこれと同じ「Stubb, Soini, Sipilä, emme alistu ikinä!」でした。


(abcxyz)

2016年3月11日金曜日

連載・さらば福祉国家 フィンランド首相:税金逃れを指摘されると「非常に悲しい」

国会の質疑応答でLi Andersson(Vasemmistoliitto / 左翼同盟)からの質問に対するフィンランドの首相Juha Sipilä(Suomen Keskusta / フィンランド中央党)の回答が話題となっています。


Andersson:

政府が学生や労働者の収入をたくさん切っているのに、同時に最もお金持ちの人は収入からほとんど税金を払っていないことを知りました。これは合法的な税金逃れです。あなたはこの収入の高い配当を受ける人たちをこの今行われているフィンランドの「節約政治」に参加させるつもりはありますか?そっちのほうが収入の低い学生の収入をさらに節約することより、もっと正しい選択肢ではありませんか?


この「節約政治」というのは、「国債を減らさないとヤバいんじゃね?」みたいな考えから、公約を平気で無視して、教育を始め、医療、生活保護など、様々な分野の予算を削り、大学教授たちも次々と辞めさせられている今の政権のやっていることです。


Andersson:

総理大臣自身はいわゆる"Vakuutuskuori"(税金逃れのシステムの一つ)を使って自分の財産を預けてますね。これは自分の財産を隠せたり配当を税金なしでもらうことをすることを可能にするシステムですよね。これはつまりお金持ちのフィンランド人たちが使う税金逃れの手段であります。

あなたはこの福祉社会を支援するためにこのシステムを改善するつもりはありますか?

これに対してSipilä首相は

私自身が脱税*をやっていると言われているようで、非常に傷つきます。

と答えています。

*実際にはVeronkieltoと言っている。VeronkiertoのWikipediaページを日本版にすると「租税回避」となるが、Veronkieltoは違法であり、「脱税」の意味となる。

Anderssonは「私はその違法な脱税の話はしていません、合法なものの話をしていました。」などと言ったそうです。

合法な税金逃れをしていると指摘され、違法な「脱税」はしていないと言い返す首相。これまでフィンランドが注目されてきた教育や福祉のお金は節約するのに、結局自らを含む金持ちには媚びを売っている

質疑応答の話に戻ると、Sipiläはほかにも「会社を売るときに、ルクセンブルグを経由して売るようアドバイスされたこともあったが、フィンランドに税金を払いたいために、そうはしなかった。僕はここ(フィンランド)で勉強して、ここは治安がいい国で、自分の税金の払い方で人々のモデルとなりたい。」なんて言ったそう。

「フィンランド人に生まれることは、それだけで宝くじに当たるようなもの」と言われてきたフィンランド。私の周りのフィンランド人たちも「これまでは不満があってもフィンランドに希望が持てたが、さすがに今の政府には希望もないかも」、「フィンランドの売りだった教育や福祉に回す予算を減らして、システムを壊して、今から昔の予算に戻したって、元に戻るには数十年かかるだろう。現政権の4年間でどれだけフィンランドが破壊されるのか」などと語っています。


翻訳: Petra@妙見星の下で

Yle, Iltalehti, [YLE]

(abcxyz)

2015年5月29日金曜日

フィンランド最大紙、現政権を「背骨がなく色を変えるイカのよう」と揶揄

フィンランドの現在の与党3等は、公約として「教育予算からは節約をしない」としていましたが、現在のところ、その公約は守られず、今後4年間の政府の方針として、教育を始め、医療、生活保護など、様々な分野の予算が削られると発表されました。

これをフィンランド最大の新聞Helsingin Sanomat(ヘルシンキ新聞)では「現在の政府は背骨がなく色を自在に変えるイカ*のようだ」と揶揄しています

*原文ではアオリイカ属のイカ、フィンランド語名:karibianseepia、英名:Caribbean reef squidが使われている。


Karibianseepia pettää aina [via Helsingin Sanomat]

監修:「妙見星の下で」のペトラさん

(abcxyz)