2017年6月11日日曜日

フィンランド政府連立与党次期党首は人種差別で知られるHalla-Ahoに。

Perussuomalaiset(真のフィンランド人党、以下PS)の現在の党首Timo Soiniは党首を辞めると意思表明していましたが、次の党首が決まりました。

Sampo Terho(現「ヨーロッパ文化とスポーツ」大臣)とJussi Halla-Aho(46)の間でどちらになるかが注目されていましたが、結局次期党首はJussi Halla-Ahoとなってしまいました。Halla-AhoはEU議会のフィンランド代表議員の一人でもあり、ヘルシンキ市議会議員でもあります。

しかし、多文化性とフィンランドの移民制度を批判していることで知られており、何度も様々なブログ上での発言で訴えられています。例えば:

・移民増加のせいで性犯罪が増えているため、性犯罪の被害者は緑党、左翼党の支持者になるべき。
緑の党の女性議員に訴えられる>警察が起訴するほどのものではないと判断

2009年にはこんな発言も:

・ペドフィリア、泥棒、人の税金で生活するのはイスラム教の遺伝。
警察に起訴され有罪に>「宗教的平和を破壊する罪」で収入に合わせた30日分の罰金として330ユーロの罰金を支払うことに

またHalla-Ahoは逆に、YLEに「人種論博士」と形容されたこと(Halla-Ahoは大学でロシア語専攻、古典教会スラブ語の博士号を持っている。このことと人種差別的なことをかしこまって言うことを揶揄してこう言った)を訴えたりもしています。

思ったことを周りを気にせず口にすることで人気を得た彼は、アメリカ大統領のドナルド・トランプも想起させるものの、落ち着いて賢そうな話し方をする彼はトランプほど馬鹿っぽい雰囲気はありません。内容はトランプ的だが言い方はかしこまっている、と言ったイメージです。

現在の与党は議席の多い順にSuomen Keskusta(フィンランド中央党、以下Kesk)、Kansallinen kokoomus(国民連合党、以下Kok)、PSの三政党で構成されています。
彼が政権の一端を担う真のフィンランド人党の党首となることで、今後大臣の入れ替わりがあると見られており、PS内のより人種差別的な議員が大臣として選出されるのではとみられています。

しかしそうなると、KokもKeskも(特にリベラルな資本主義的政党であるKokは)人種差別は許容しないはずです。こうなると政府内部に亀裂が入るでしょう。

フィンランド国会の議席は200あり、どの政党も議席の半分を占めることは不可能です。そのため現政府は上記三政党で全議席過半数以上の議席を確保していたわけです。一つ前の政府はKOK、Sosialidemokraattinen puolue(フィンランド社会民主党、以下SDP)、Vasemmistoliitto(左翼同盟、以下Vas)、Ruotsalainen kansanpuolue / Svenska folkpartiet(スウェーデン党、以下RKP)、Kristillisdemokraatit(キリスト教民主党、以下KD)、Vihreä liitto(緑の同盟、以下Vihr)の6政党(Vasは途中離脱)で構成されていたためレインボー政府という呼び名(呼び名は政党の色の組み合わせで決まる事が多い)でした。

現在のところ支持調査ではKokが一番人気、KeskとPSの人気は下がっている状態で、もしHalla-Aho新党首が今の政権の合意と異なることをしようとしたり、人種差別的な議員を大臣にすれば内閣解散、KeskとKokは他の党を政府に入れないと議席の過半数を占めることができません。KDとRKPを取り入れることができれば議席数が101人となりますが、議席数がそんなにギリギリだと一人休んだら法案が通らないし、一人でも政府の決断に反対票を投じればやっぱり法案が通らなくなります。

PSはスウェーデン語の義務教育に反対しているため、スウェーデン党RKPはPSが政府を出れば政府に加わる可能性も(RKPはスウェーデン系の人さえ良ければ他の政策についてはどうでもいいと思っていると揶揄されることもしばしある)。しかしキリスト教のKDは、現政府の困窮者からの節約はキリスト教的価値観に合わないとして反発する可能性も持っています。

なお、SDP、Vih、Vasは現政府にかなり反対しているため誘われないだろうし、参加しても参加しないだろうとも見られます。

現政府が最重要と考えるのはSoTe-uudistus(福祉医療改革)。その現行案をどうしても通したいKokとKeskは、Halla-Ahoの言い分を飲む可能性もあるかもしれません。この福祉医療改革は2009年あたりから誰もに望まれていますが、現政府の改革案は今通すために無理やり形にした感があり、専門家にも批判を浴びています。

別の可能性としては、KokとKeskがPSと仲間割れし、政府解散して仲間を探しても見つからず…ということもありえます。そうなければ国会解散となり、選挙がおこなわれるでしょうが、そうなればKeskが政府に入ることは無いでしょうし、Persも入れないでしょう。しかしHalla-Ahoは政治ゲームに興味がある風ではなく、なおかつ交渉力も低いと見られており、そうなったとしてもそれを気にせずに政治を続けるだろうという見方もあります。

ヘルシンキ市長のJan Vapaavuori(Kok)は、「(Kokの)Orpo党首が決める問題ではあるが、Halla-AhoとKokは同じ政府にはいられない」などと発言しています。

また、非常に悪質な某人種差別フォーラムは(あえて名前を書かないのは、ターゲットになれば脅迫やストーキングの恐れもあるため)、これはもともとHalla-Ahoのブログのコメント欄から派生したものだそう。


Wikipedia, YLE [via YLE]

(abcxyz)



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